乳がんの定義 1
母乳を分泌する乳腺細胞の集まりを腺房といいます。腺房が集まったものが小葉と呼ばれる部分です。小葉から乳頭まで母乳を運ぶ管が乳管(腺管)です。普通、乳腺が乳頭を中心に放射状に15〜20個並んでいます。この全体を乳腺組織と総称しているのです。
乳がんとは、この乳腺組織に発生したがんのことです。乳腺組織の一部の細胞の遺伝子が、さまざまな要因を積み重ねて変異し、がん細胞となって増殖したものが乳がんです。
乳がんのほとんどは、小葉を出てすぐの乳管(腺管)の基底膜の上皮細胞が増殖するという形で発生してきます。腺房及び乳管の内側は1層の上皮細胞で成り立っています。ここが増殖して内腔の方に向かって細胞が密になっていきます。つまり通り道が狭くなっていくのです。これが乳管がんです。
乳がんには小葉から発生するものも5〜10%あり、これは小葉がんと呼ばれています。
正常な細胞もがん細胞も細胞分裂を繰り返しながら増殖していきます。ただし、正常な細胞は、ある段階まで来ると細胞分裂をしなくなり、役割を果たして死滅していきます。それに対しがん細胞は無限に増殖します。放っておけば宿主が死ぬまで増殖をやめません。
また、正常な細胞は集団でしか生きられませんので、決められた場所から移動することができません。しかし、がん細胞は1個でも生きられます。たった1個でも、もともとの組織を離れ、血液やリンパの流れに乗り、流れ着いた場所に着床し、そこで新たに1個が2個に2個が4個にと増殖していくことができます。
増殖をやめないで周囲の組織にどんどん入り込んで広がることをがん細胞の浸潤といいます。血液などを通して遠くの臓器までいき、たどり着いた先で増殖することを転移といいます。浸潤と転移があることが、がん細胞と正常な細胞の大きな違いです。
乳管がんも小葉がんも、乳管上皮を包んでいる基底膜を超えて浸潤したり転移したりしていきます。乳管内あるいは小葉内にとどまっているがんを非浸潤がんといいます。これは、再発や転移を起こす可能性のほとんどないがんです。非浸潤がんと診断がつけば手術で99%治癒します。
日本では、浸潤がんの標準型は、<乳頭腺管がん><充実腺管がん><硬がん>の3つに分類されます。
乳頭腺管がんとは、乳がん全体の約20%にあたり、きのこ状に発育するがんです。分化度は高分化型、すなわち正常細胞に近い様相をしていて、リンパ節転移の確率も低いものです。
充実線管がんとは、腺腔が不明瞭な小さな腺管の、中身を押し広げるように増殖するがんで、乳がん全体の約20%を占めています。様相や、悪性度は中程度とされています。
硬がんとは、乳管の外側に砂をパラパラとまき散らしたように発育するがんで乳がん全体の約40%にあたります。かなり悪性ながんです。
特殊型の乳がんとは、上記の標準型とは異なるもので10種類ほどあります。粘液を多量に含む粘液がん、乳腺炎と間違われることが多い炎症性乳がんなどです。 炎症型乳がんとは、乳房が真っ赤にはれてしまい、手術が難しく抗がん剤と放射線で治療しますが、5年以内に再発する確率が高いがんです。ただ最近は抗がん剤の進歩もあり、手術できる例も増えています。
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