乳がんの症状 1
乳腺外科を受診する女性のほとんどは「しこりがある」から病院にやってきます。他には「乳頭から血液が出た」「乳房が痛む」これらが最初の自覚症状です。
乳がんは5mmから1cmぐらいの大きさになると、自分でも触って探すことができます。したがって、早期発見のためには自分で気づくことが大切です。ただ、乳がんのしこりは必ずしも硬いものだけとは限らないし、痛みの有無もさまざまです。自己検診は重要ですが、自己判断だけではいけません。しこりが見つかったらまずは乳腺専門医にいきましょう。 しこりのほとんどは病的なものでないのも事実です。
しこりが皮膚表面に近いところにあると、皮膚がひっぱられてえくぼ状にくぼんだり、赤く腫れたりすることがあります。これは硬がんなどの特徴です。
乳房表面の皮膚がオレンジの皮のように赤くなったり、痛みや熱をともなうのは炎症性乳がんの症状です。これは皮下のリンパ管が、がん細胞の浸潤で詰まってしまい、リンパ液の流れがせき止められるために起こります。
乳がんは近くのリンパ節に転移しやすく、その場合はリンパ液の流れが悪くなり、わきの下が腫れたり腕に向かう神経が圧迫されて、腕がしびれるという症状が出ることもあります。
転移の場所により遠隔転移した場合の症状は異なります。乳がんが転移しやすいのは、骨、肺、肝臓、脳などで、近くのリンパ節以外の遠くのリンパ節に移動することもあります(遠隔リンパ節転移)。
腰、背中、肩の痛みなどが持続する場合は、骨への転移が疑われます。咳が出たり息苦しくなったりすれば肺転移です。肝臓の場合は症状が出にくいのですが、お腹が張ったり、食欲不振、あるいは黄疸なども出ることもあります。脳への転移では、手足の麻痺や言語障害、頭痛や吐き気などの症状が出ることがあります。
線維腺腫は、乳房の良性腫瘍で10代から30代の人に多く起こります。ころころとした硬いしこりで、触ると動きます。特別な治療は必要ありません。しこりが急速に大きくなる場合、局所麻酔で切除することもあります。
間違えやすい乳房の病気 葉状腫瘍
葉状腫瘍は、20代から30代の人に比較的多く見られるころころとしたしこりです。最初は線維腺腫に似ていますが、2〜3ヶ月で急に大きくなります。葉状腫瘍には良性と悪性、どちらともいえないものがありますが、ほとんどは良性です。悪性と診断されると乳房切除が必要です。葉状腫瘍の95%が治癒しますが、少数ながら遠隔転移することもあります。また、良性でも再発を繰り返すうちに悪性になることもあるので、葉状腫瘍は注意深く経過を見ることが必要です。
間違えやすい乳房の病気 乳管内乳頭腫
乳管内乳頭腫は、乳頭の近くの乳管内にできる良性の腫瘍で、乳頭から出血したり、血液の混じった分泌物が出たりします。がんを疑う場合は腫瘍を切除することもあります。
間違えやすい乳房の病気 乳腺炎
乳腺炎は、細菌感染によって起こる乳房の病気で、赤く腫れたり、痛み、膿み、しこりなどが見られます。授乳期に、母乳が乳房内に滞って炎症を起こすうったい性乳腺炎が多く、ここに乳頭から細菌が進入すると化膿性乳腺炎となって膿みが出るようになります。乳頭にできた傷から細菌感染が起こることもあります。膿みのあるときは注射器で膿みを吸い出したり切開することもあります。
また、乳輪の下に乳管膨大部と呼ばれる乳管のふくらんでいるところがありますが、ここに膿みがたまることがあります。これは、乳輪下膿瘍といって、陥没乳頭の人に起こりやすく、治りにくい乳腺炎です。陥没乳頭では、皮膚の表面の角質が乳頭の中まで入り込んでいるために分泌物がたまりやすいのです。乳頭に穴を開けて、その部分を取り除くと乳腺炎を起こさなくなります。
間違えやすい乳房の病気 乳腺症
乳腺症は、エストロゲンとプロゲステロンの分泌のアンバランスにより、乳腺にいろいろな変化が起こる症状です。30代から40代に多く見られ、乳房内にしこりができたり、乳腺の一部がむくんだり、水がたまったり、張りや痛みを感じたりします。乳頭から分泌物が出ることもあります。痛みの強いとき以外は特別な治療は必要ありません。
乳腺症ががんに変化することはまずありませんが、乳腺症の下に乳がんが隠れていることもあるので、マンモグラフィーや超音波検査などを定期的に受けることが必要です。
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